OTSの基盤技術

副作用の少ない新しい抗がん剤を開発するためには適した標的遺伝子を同定することが重要となりますが、私たちは、がん組織からがん細胞だけを高純度に単離するLaser Microbeam Microdissection(LMM)、独自のcDNAマイクロアレイによる網羅的な全遺伝子発現情報解析および遺伝子機能解析を基盤技術とし、最適な標的遺伝子の同定を行っております。

LMM

がん組織にはがん細胞だけでなく、間質細胞や正常細胞などのがん細胞以外の細胞が多く混在しています。このような組織をそのまま試料として遺伝子発現解析を行っても、正確ながん細胞の遺伝子発現情報を得ることは不可能です。私たちはLMMを用いてがん組織からがん細胞だけをほぼ100%の純度で回収し、採取したがん細胞を試料としたがん細胞特異的な遺伝子発現の解析を行っています。

cDNAマイクロアレイ

私たちは、感度と特異性が高く、ヒトのほぼ全遺伝子の遺伝子発現を一度に解析できる、独自のcDNAマイクロアレイシステムを構築しました。スポットするターゲット遺伝子の作製には、cDNAの3’側の繰り返し配列を含まない約200-1000塩基の配列を、遺伝子特異配列を持つプライマーを用いてPCRで増幅しました。これらのPCR産物を、特殊なスライドガラス上に高密度にスポットすることにより、遺伝子特異的で感度が高いシグナルが得られます。このcDNAマイクロアレイシステムとLMMを組み合わせることにより、精度・信頼性共に非常に高い遺伝子発現解析を実現しました。また、このcDNAマイクロアレイのシステムを用いた正常臓器における遺伝子発現解析も行い、正常臓器での発現様式についても解析を行っております。

標的遺伝子の同定

cDNAマイクロアレイとLMMを用いた遺伝子発現解析により、がんで高発現し、正常臓器のうち生命維持に重要な臓器での発現が極めて低い遺伝子群を同定しました。これらの遺伝子の中には、結果的にがん細胞で発現が高くなっているような遺伝子と、その遺伝子の高発現ががん化に必要とされる遺伝子の、2種類が考えられます。そこで、遺伝子発現情報で選ばれた候補遺伝子について、その働きががん細胞の増殖や生存に重要な役割を担っているかどうか、RNA干渉法という技術を用いて解析を行っています。RNA干渉法を用いた遺伝子機能阻害実験により、その働きを特異的に阻害した時にがん細胞の増殖が阻害される、あるいはがん細胞が死ぬような遺伝子を創薬研究の対象としています。つまり


  • ・がん細胞で高発現している
  • ・正常臓器での発現は極めて低い
  • ・がん細胞の増殖または生存に必須である

という、3つの基準を満たす分子を、OTSの基盤技術を用いて絞り込むことにより、新しい分子標的治療薬開発のための独自の標的遺伝子の同定を行っています。

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